前回の闘病記からの続きです。
◼︎2013年7月12日(金)。入院61日目。抗がん剤治療開始から53日目。
この日から点滴する抗がん剤が変わりました。まず14時半から吐き気止めのグラニセトロンを30分、その後15時から抗がん剤のドキソルビシンを24時間かけて点滴しました。オレンジ色が少々毒々しい薬です。
さらに、点滴のライン(管)から、抗がん剤のオンコビンも注射しました。この薬は、前回(Hyper-CVAD/MA療法1コース目のHyper-CVAD療法)の時にひどい便秘を引き起こしてものが食べられなくなり、非常に苦しい思いをした薬です。
そのため、看護師のMさんが、前回の大変だったときの看護記録を見てくれました。すると、一回目のオンコビンの後は問題なく、一週後の二回目のオンコビンの翌日あたりから便秘がひどくなったとのこと。そのため「再来週が要注意ですね」と言われました。それまでは下剤の量を調整しながら戦々恐々です。
この日も引き続き骨髄移植を含めた治療方針について考え込んでいた僕は、その日担当だった看護師のWさんにも意見を聞いてみました。Wさんはこんな話をしてくれました。
先日、60歳台で、三年前に臍帯血移植をした患者さんとお会いして話す機会がありました。その方は、自分が今の体力に戻るまで三年かかった、と言っていました。だから、移植をするなら、GVHD(移植片対宿主病)だけではなく、その後の回復期間も考えておく必要があります。
私が高山さんの立場だったら、まずは移植はせず、化学療法だけで様子を見ると思います。他のナースにも相談してみるといいと思います。
さらにこの日も、担当医のMY先生とも治療方針の話をしました。下記のような内容です。
CR1(第一寛解期)で移植しなかった場合、化学療法で治る率と、その後再発してCR2(第二寛解期)から移植して治る率が、合計しておよそ50%程度だと考えると、CR1で移植して治る率である60〜70%とそれほど変わらないとも言えるのかもしれません。これは数字遊びになってしまいますが。
今は高山さんの腫瘍がいいもの、つまり再発しにくいものである可能性も考えて治療に当たっていますが、もし今後再発してしまった場合は、悪いものと認識を切り替えて治療に当たることになります。それがどちらなのか、本当はすでに細胞学的に決まっているはずですが、今の科学では知る手立てがありません。
WさんやMY先生の話を受け、こう考えました。
いずれにせよ、今の抗がん剤治療(Hyper-CVAD/MA療法)が6コース終わった段階のCR1で移植を決断すれば、60〜70%の確率で長く生きられる。それはグリオーマ(脳腫瘍)の時の5年生存率である70〜78%とあまり変わらない。そして、移植しなくても長期生存率が50%なら、それとそれほどは変わらないとも言える。ということは、自分はまだまだ長く生きられる可能性が十分にある。
この日も家内がお見舞いに来てくれ、先生たちの話や自分の考えたことを話しました。それで気持ちが大分落ち着きました。
この日のライフログ(メモ)には、下記の一文が残っていました。
自分の命、これからの人生と向き合う日々。