さて今日は日曜日。久し振りにこの週末は特に予定もなく、ゆっくり過ごせる。
昨日は、しばらく行けなかったスポーツクラブにも行けたし、今日は、ゆったり読書など。
ということで、「1日5分の口コミプロモーションブログ」(長野弘子・増田真樹 共著)を読んだ感想を。
まず何よりも驚いたのは、最近の本では珍しい、その誤字脱字の多さだ。
「企業債とのCMSとして・・・」と書いてある。一瞬「社債のことか?」と思ったが、どうやら「企業サイト」らしい。
また「あくまでDYI型のサービスなので」とある。脚注もなく、「何か僕の知らない最先端の新しい略語か?」と思ったが、少し考えて、これはきっと「DIY(=Do It Yourself)」、つまり「自分の力でやりなさい」ということと想像力が働く。
これくらいならまだいいのだが、「WSYSIG(見たまま直感的デザイン)」というのもあった。括弧書きで説明があるため、思わずそのまま見過ごしがちだが、性格が神経質な僕の場合、そうはいかない。
「ん、何か違う。」拭い切れぬ違和感と、自分の記憶への若干の不安のもとググってみて胸をなで下ろす。「ああ、よかった。やっぱ正しくはWYSIWYG(つまりWhat You See Is What You Get)だよね。」
驚いたことと言えばもう一つある。
オムロンは回転すしの自動生産システムにRFIDを活用していて、しかもそのシステムの名前は「OAISO」というらしい。「お愛想!」である。BtoCマーケティング的ネーミングというか、その発想がすばらしいではないか。
あ、いけない!そんなことを書きたかった訳ではないのだ。
この本、いい本でした。(ここまで書いてきて、信用できないかも知れないが・・・本当です。>著者のお二人)
タイトルでは比較的ライトなブログ本と思って読み始めたのだが、意外や硬派な内容。
ジャーナリスティックというか、ブログ論的というか。
ネット黎明期から最近のブログ人気までの時代の流れや、政治への影響力、社長ブログ、企業内ナレッジマネジメントへの影響など、遍く論じています。
正直なところ、勉強になりました。
以下、気になった箇所を自分のための備忘録としてピックアップ。
「自分の考えを毎日ブログに記録していくことで、今まで気付かなかった自分を知ることができる。・・・そのときには単なる思いつき、アイデアであっても、あとから複数のアイデアと結びついて思わぬひらめきが生まれることがあるのだ。」
「ブロガーが投稿した、無意識の情報がその人の人物像を浮き彫りにするのです。」
「ブログや日記サイト、個人によるニュース紹介サイトの動向を指して、『個人の知識の体系化』(パーソナル・オントロジー)だといわれることがあります。」
「あるブログ運営ツールを『備忘録・メモ、頭の中にある気になる事柄を定着させるためのツール』という表現で捉えている。」
「雑誌や新聞のように形式化された情報とは異なり、無意識で書いたような単なるメモ書きの蓄積だからこそ、かえって等身大の人物像が浮き彫りになるともいえそうだ。」
また、企業内利用に関しても非常に面白い内容が。
「グーグルは現在、ブロガーを社内イントラネットに統合し、『ブロガー・イン・グーグル(BIG)』という社内ブログを開発、活用している。『面白い体験やミーティングの議事録などをすべてBIGにアップしています。これらのブログは、社内限定の検索システムで検索可能です。ブログを導入したあとで、社内での情報共有はきわめて楽になりました。ウェブの世界と同様、社内イントラネットも情報過多になりつつあるので、情報すべてをメールでプッシュするのではなく、自分が欲しいときにブログを訪れ、情報を引き出す方向に移行しているのです。ブロガーを買収する以前は、2000〜3000通のメールを毎日のようにやり取りしていました。しかし、社内ブログを使ってからは、膨大なメールをやり取りする必要はなくなり、情報を整理するのがもの凄く楽になりました。』」
さすが、Googleですね。
「一般的に普及しているグループウェアやナレッジマネジメントで取り扱われる情報は、レポートや論文、スケジュール、承認、ニュースなど形式化されたものが基本になっている。・・・これまでのナレッジマネジメントは、ナレッジを可能な限り形式知化し、それをITにより効率的に蓄積、管理していくという世界で進んできた。ナレッジマネジメントという観点では、ブログが扱う”日常の雑多な情報”は削ぎ落とされてきた。しかしブログでは形式化できない情報や知識を許容できる。何気ない日常の雑多な情報を許容することで、”暗黙知”という、これまで見過ごされてきた重要な情報のアーカイブを構築することができるのである。」
実際、ブログを社内のナレッジマネジメントの一環として活用する会社は、グーグルに限らず、出てきているらしい。
「全社数百人にブログを導入している某企業では・・・」「業務の上での新しい協調作業の提案なども・・・」「この会社のスタッフは”これほど有効な情報システムは見たことがない”と口を揃えている」とあるが、どこの企業だろうか?
ぜひ社員の方に話を聞いてみたいと思う。
ということで、ブログ全般に関しての理解が深まり、思索が広がっただけではなく、私のビジネスに直結する企業内ナレッジマネジメントの今後という点でも、非常に参考になる本であった。
うちの主力製品、Web文書公開システム「Net-It Central」は、HTMLの知識のない社員でも、形式知=文書ファイルを手軽にイントラネットで公開し社内で共有できるという点で、まさに「文書ファイル版ブログ」と言ってもよい仕組みだと気付いた。
その点では、今後企業内でのブログの活用が進んでいくに連れて、「暗黙知はブログで、形式知はNet-It Centralで共有することが、ナレッジマネジメントのスタンダード」というトレンドを作って行ければ、と勝手に夢はふくらむ。
そうそう、うちが今後リリースを予定しているプロジェクトファイルマネジメント的製品では、個々の文書ファイル・図面ファイルに対するコメント投稿機能がついている。
この機能とブログを連携させれば、企業のナレッジマネジメントにおいて、非常に面白い仕組みが実現できるのでは。
うむむ。
ということで、この本、「1日5分の口コミプロモーションブログ」は、ブログに興味のある方だけでなく、ビジネスマン全般にお薦めできる。
なお、この本が大変面白かったため、思わずこの記事も長くなった。
本記事に関し、誤字脱字を発見された方は、速やかに私まで(個人的に)連絡を下さい。