「がん患者はみな、告知の瞬間、当たり前の日常が崩れ落ちる感覚を経験しています」ー「5度のがんを生き延びる技術」の「はじめに」を公開

以前このブログで、僕の新著「5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割」の目次を紹介しました。

この本にはどんなことが書いてあるのかを、立ち読み感覚で見ていただきたかったためです。

今回は「はじめに」の章を丸ごと公開します。

僕がこの本を、どんな人に向けて、どんなことを伝えたくて書いたのか。

がん患者の方も、そうでないかたも、ぜひ一度、読んでみてください。


はじめに

がんになった人はみな、告知を受けた瞬間、当たり前の日常が崩れ落ちるような感覚を経験しています。
近い将来、自分が死ぬかもしれないという残酷な現実。夜が明ければ朝が来て、新しい一日 が始まるのが当たり前だったのに、その当たり前が終わるかもしれないなんて ―― 。そう考えて、目の前が真っ暗になるのです。

同時にたくさんの不安に苛まれます。ステージはどの段階か、治療すればるがんなのか、いつまで生きられるのか、難しい手術や辛い抗がん剤治療が待っているのか、仕事は続けられるのか、治療費はどれぐらいかかるのか、家族に負担をかけるのではないか……。

今、これを読んでいるあなたは最近がんの告知を受け、不安と闘っているところでしょうか? あるいはご家族や身近な方ががんを告知され、何か自分にできることはないだろうかという思いから本書を手に取ってくださっているのでしょうか?

そうした思いを抱えているみなさんに、ぜひお伝えしたいのです。
がんを5回告知されても、乗り越えて生きている人間が実際にいることを。

私はITベンチャーの社長をしていた 歳のときに最初のがんになり、53歳の現在までに5回のがん告知を受けました。脳腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、大腸がん、肺がんです。
前のがんの転移ではなく全て別々のがんで、5つ合わせると5年生存率は約2%という低い確率です。絶望的な数字と言っていいでしょう。

それでも、たくさんの方に助けられ、手術、抗がん剤治療、放射線治療などの標準治療を受けた結果、5つのがんはほぼ治りました。今はたまに通院して検査を受けながら、自宅で妻と娘とともに普通の生活を送ることができています。

なぜ、がんを5回も乗り越えることができたのか?

そこには治療に最適な病院選びや、医師との綿密なコミュニケーションなどさまざまな要因があるのですが、中でも鍵となったのは〝折れないメンタル〟だというのが私の実感です。
がんとの闘いでは告知以降、さまざまな不安や恐怖に直面します。希望を失いそうになることも、不安で押しつぶされそうになるときもあります。
そんなときにどうやって気持ちを立て直し、治療に前向きに取り組んでいくのか。つまり折れないメンタルをどう作り、どう保っていくのか。それを私は5回のがん闘病で模索し、実践してきた結果、生き延びることができたのです。
今まさにがんと闘うみなさんへ、絶望や不安を乗り越え、最終的にはがんそのものを乗り越 えていくために、私がたどり着いた具体的な方法をお伝えしたいと思い、こうして筆を執りました。

本書の構成は、まずは私が何者で、どのようにがんと闘ってきたかを知ってもらうのがいい と考え、第1章は3回目のがん・白血病の闘病のこと、第2章は4回目のがん・大腸がんの闘 病のことを書いています(1回目のがん・脳腫瘍と、2回目のがん・悪性リンパ腫の闘病につ いては、前著『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』に詳しく書きました。
ご興味があれば読んでいただけるとうれしいです)。

5回目のがんである肺がんについては、本書の内容がほぼ固まってから告知されて手術を受けたばかりですので、闘病については詳しく書いていません。「おわりに」で簡単に触れるつもりです。

第3章は、5度のがん経験が自分にもたらした健康への考え方の変化や、がんによって人生観が変わったことについて書いていきます。

第4章は、本書で一番伝えたい「がんを乗り越えるためのフレームワーク」を説明しています。私がこれまでのがん闘病でどのように不安、恐れ、絶望を乗り越えてきたのかを、改めて体系的にまとめてみたものです。瞑想やマインドフルネスの考え方も取り入れた、その方法をていねいに解説していきます。

第5章は、なぜがんは5回も私のところにやってきたのか、自分なりの考えを記しています。

がんになった人は必ず「何が悪くて自分はがんになったのだろうか」と考えるものです。私は何度も繰り返すがんのことを、「人生のシナリオ」という考え方の中で捉えてきました。でもその考え方が、2回のがん闘病を終えた前著の時点と、5回の闘病を終えた今では少し変わりました。そのあたりの考えをご説明して、みなさんと一緒に考えてみたいと思っています。

私は 40歳でITベンチャー企業を立ち上げた、いわゆる〝IT社長〟でしたが、度重なるがん闘病のために、自分の子どものようでも分身のようでもあった大切な会社を断腸の思いで手放しました。
売却がうまくいかなければ社員が路頭に迷ってしまうという不安、また会社を失ったら自分は何をして生きていけばいいのかという不安と闘ったM&Aの一部始終も記しています。
治療への不安や恐怖ももちろんありました。5回のがんの中でも血液のがん(悪性リンパ腫と白血病)の闘病は特に苦しく、治療中は実際に生死の境をさまようことになりました。
あまりの過酷さに耐えかねて、病室の窓の外に見える、あのビルの屋上から飛び降りたほうが楽なのではないか ―― という思いが頭をよぎったこともあります。

そうした経験を通じて私が実践してきた不安や苦痛を乗り越えていく方法が、がんと闘う患者さんやそのご家族はもちろんのこと、ストレスの多い現代を生きるみなさんが困難を乗り越えて前を向く助けになれば、こんなにうれしいことはありません。
大丈夫、5年生存率2%のこの私が生きているのですから。
あなたにもきっと、希望があります。
困難を、一緒に乗り越えていきましょう。


以上が「5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割」の「はじめに」になります。続く目次については、こちらの記事で公開しています。

この本が1人でも多くの方に届き、がんという困難、そして人生で出会うさまざまな不安や絶望を乗り越えていくためのヒントになればと願っています。

僕が文字通り命をかけて書いたこの本の応援を、どうぞよろしくお願いいたします。

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5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割

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