【書評】日本の若者は不幸じゃない

福嶋 麻衣子,いしたに まさき
ソフトバンククリエイティブ
発売日:2011-01-19

先日の「今週読んだ本」記事にも含まれている本ですが、いろいろと考えさせられるところがあったので、改めてこのブログで取り上げたいと思います。


秋葉原で萌え系アイドルが多数在籍するライブ&バー「ディアステージ」を経営している、喪服ちゃんこと福嶋麻衣子さんと、有名ブロガーであり僕の友人でもあるいしたにまさきさんの共著によるこの本。
最初は、そのタイトルと喪服ちゃんの経歴から、アキバ系の若者について書いた本なのかと思っていたのですが、読んでみたら全然違いました。
現代の若者の考え方や価値観、そしてその背景を理解する上で、非常に参考になるいい本でした。
特に「不況ネイティブ」という視点は、自分にとっては非常に新しい視点でした。今の若者を「ゆとり世代」と捉える視点はありましたが、それと並ぶもう一つの視点を得られたという感覚です。
「自分が持っていなかった新しい視点を得る」ということは、本を読んでいて最もうれしいことの一つです。新しい視点を獲得することにより、今まで見ていたものの、今まで気付かなかった新しい側面を捉えることができ、より深く理解することができます。
喪服ちゃんの飾らないでも静かな情熱にあふれた文章から、そんな視点が得られたことが一番の収穫でした。
また後半のいしたにさんの章は、まさにいしたにさんらしいフットワークと考察によるルポ的な内容。日本の地方の可能性を感じさせます。地方出身者の僕としては、田舎に思いをはせ、いろいろ考えさせられる内容でした。
以下、喪服ちゃんの章を中心に、特に興味深かったポイントを抜粋します。

生まれたときからずっと不況だった世代のことを「不況ネイティブ」と呼んでもいいと思います。
不況の時期に当たり前のように育った若者たちは身の丈にあった人生設計、すなわちイメージしやすい1年後、2年後のことを考えて動くようになっていると思います。不透明な10年後のことを考えても意味がない、ならば確実な1年後のことを考えていたほうがいい。それが今の若者たちの考え方なのです。
これだけ社会が不安定になれば、10年、20年も同じ会社で働きつづけようと考える若者が減っていくのは当然だと思います。
「会社に就職して、一生会社のために働きつづける」ことを最初から馬鹿にしている部分があります。
彼らは現実味のない一攫千金を望んでいるのではなく、想像しうる小さな幸せを望んでいるのです。
会社や家庭に帰ることができなくなった若者たちは、新しい帰る場所、居場所としてインターネットを選びました。インターネットの大型匿名掲示板「2ちゃんねる」には多くの常連投稿者がいますが、彼らのことを”住人”と呼び習わすのは象徴的だと思います。
芸大では、売れなくても自分は未来あるアーティストだからそれでいいという風潮にいつも私は苛立っていました。
中身はなくても表面ばかり取り繕う日本の現代アート界の現状に比べて、秋葉原の若い子たちのほうがよほどかっこいい。
田原総一朗さんがディアステージにお越しになったとき、私は「ここは村です。お客さんたちのヲタ芸は、いわば村の踊りなんです」と説明しました。”村”というのは、この本で言うところの”居場所”のことです。それに対して田原さんはツイッターで「村という言葉に僕は見事にはまった」と書いてくれました。

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