僕は大学卒業後、アクセンチュア(当時はアンダーセンコンサルティング)という外資系のコンサルティング会社に入社しました。この本は、僕の社会人生活で最初の上司だった西村裕二さんが一昨年出版された本です。
僕の3年10ヶ月のコンサルタント経験の中で、西村さんとはいくつかのプロジェクトで一緒に仕事をさせていただきました。本当に優秀な方でした。今ではアクセンチュアの執行役員・経営コンサルティング本部統括本部長になられています。
そんな西村さんの久し振りの著書。アクセンチュアによる世界のハイパフォーマンス企業500社の調査分析に基づき、不況後のグローバル経済で日本企業が再びリーダーの地位を得るための具体的な提言が書かれています。
この本を読み進める中ですぐに頭に浮かんだのが、つい先日読んだ、大前研一氏の「お金の流れが変わった!」。
西村さんの提言と大前さんの提言には、重なる部分が多くあります。グローバルでのマネーの動き、新興市場のローエンドを狙うべきという主張、などなど。
西村さんの本は一昨年秋(2009/11)発行、大前さんの本は昨年末(2010/12)発行と、発行時期には1年強の開きがあるのですが、それだけに西村さんの主張には妥当性があり、かつ、その重要性と緊急性が増しているということだと考えられます。
西村さんの本によると、日本企業が再び世界の頂点を目指すために残された時間はあと3年。1年以上前の本ですので、もう猶予期間は2年を切っていることになります。
その間に、グローバルのハイパフォーマンス企業から盗むべきところは盗み、また日本企業ならではのよさを最大限に活かしていけば、日本企業も再び世界の頂点に立てる、というのが西村さんの主張。
ハイパフォーマンス企業での事例はもちろん、アクセンチュア自身の改革への取り組みや、西村さんが実際のコンサルティング現場で得た知見なども豊富に含まれていて、机上の空論ではない説得力があります。そしてその説得力が故に、まだまだ日本企業もいけるはずと勇気が湧いてきます。
多極化するグローバル経済の流れを捉えつつ、日本経済復興への道筋を見極める上で、非常に参考になる一冊です。
最後に蛇足を。
僕がコンサルティング業界を離れ、実業(というか商売)の世界で生きていこうと決めた理由の一つは、自分はいくらがんばっても西村さんのようにはなれそうもない、と思ったことでした。すばらしく頭が切れる方で、とても自分のような凡才には追いつけない、と当時思ったものです。しかも人間的にもすばらしい。一緒に働く中で、本当にいろいろなことを勉強させてもらいました。
あれから大変出世された西村さんですが、今でもたまにお酒を飲みながら、いろいろとアドバイスをいただいたりしています。上司がいない自分にとって、大変貴重な元上司です。