患者仲間の死

先週、患者仲間の友人が亡くなりました。
このブログにも何度か登場していただいたUさんです。33歳の若さでした。
Uさんは、一昨年の11月にグリオーマが見つかりました。グレードは4でした。最初の病院では「腫瘍が広範囲に広がっているため手術は難しい」と言われたものの、もちろん諦めきれず、奥様がネットで調べる中で、僕のブログを見つけて、東京女子医科大学病院にセカンドオピニオンを聞きに行き、そのまま女子医大への転院と手術が決まりました。
当時のことは下記のブログ記事に書きました。


▼ブログが他の患者さんの役に立ったことを実感(近況報告)(2012年1月25日)
Uさんの奥様のコメント部分を以下に抜粋します。

始めまして。
高山さんのブログを読ませて頂きました。
今日、主人が病理検査をし、グリオーマであろうと主治医の方から言われました。また、グレードは1ではなく、右側後頭部に広範囲にあり、手術をするのは難しいと…結果がでるまではわかりませんが、女子医大にてセカンドオピニオンを伺いたいと思いました。主人は32歳で、人生はこれからです。
どうしても治してあげたいので、高山さんのブログを読んだ時、小さな光が見えた気がします。お伺いしたいのですが、何という先生に見ていただいたのでしょうか。(2011/11/26

主人の病気を治せるかもしれない!と暗闇を歩いていた私達夫婦に光を与えてくださった、高山様のブログ。今日、女子医大に転院しました。そして、12日に手術にて摘出することが決まりました。手術により、左半身が完全麻痺になってしまいますが、この先どんな試練にも立ち向かっていく決意を私達夫婦は決心しました。以前の病院での病理検査結果ではグレード4と言われ、摘出は出来ないと言われましたが、女子医大でのセカンドオピニオンでは、摘出します。とおっしゃって頂きました。私達には、とても心強い言葉でした。女子医大に行くことが出来たのも、高山様のブログのおかげです。本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、私が投稿したものに返信をしてくださり、有難うございました。毎日、高山様のブログを拝見させて頂いております。高山様のブログが私の希望の光なので。
また、近況をメールさせて頂いてもいいでしょうか。
寒い日が続きますが、風邪をひかないようお気をつけ下さい。(2011/12/7

Uさんは一昨年の12月12日に女子医大で手術を受けられました。その後、昨年1月に、僕は病院で初めてUさん夫妻とお会いしました。お互いへの愛情にあふれる本当に仲の良いご夫婦でした。奥様は涙を浮かべながら、「本当にありがとうございました、高山さんのブログが私たちの希望の光なんです」と言ってくださいました。
その後も、僕が毎月の外来での診察のために病院に行くと、よくUさん夫妻にお会いしました。奥様が車椅子を押し、その周囲に親御さんもいらっしゃいました。お母様とも何度かお話しさせていただきました。特に昨年の後半は、よく病院でお会いしました。お会いしたときのことは、下記のブログ記事に書いています。
▼病院で知った、他の脳腫瘍患者さんへのブログの影響度(2012年2月16日)
▼カクカク動く頭蓋骨/予期せぬ出会いと再会(2012年9月26日)
▼「ブログ、続けてくださいね」「再発しないことを祈ってます」(2012年10月29日)
▼今までで一番多くのブログ読者さんにお会いした日(2012年11月22日)
そのUさんが、先週亡くなりました。奥様のFacebookで知りました。
僕は家族を連れてお通夜に行ってきました。はにかんだような遺影の彼の笑顔と、喪主席で背筋を伸ばして気丈に振る舞う奥様の姿を見て、涙が出ました。自分自身の病気の時にもほとんど涙を流したことはなかったのですが。
患者仲間の死がこんなにも悲しく、辛く、重いものだとは思いませんでした。
今でも、彼の笑顔を思い出すと涙が出ます。
仲のいい二人の様子を思い出すと涙が出ます。
彼の無念さを想像し、奥様の寂しさを想像すると、涙が出ます。
そして、自分にとっても、病気で死ぬということのリアリティが増してきます。
二人なら、きっと病気を克服してくれる、女子医大なら、きっとUさんのグリオーマを治してくれる、そう信じていました。
Uさんの勤務先はオーシャンブリッジの近くだったので、元気になったら一緒にランチに行きましょうと約束していました。
将来、お互いに病気のことを昔話にして語り合える日が来ると信じていました。
でも叶えられませんでした。
僕ら残された患者が、一年でも一日でも長く生きていくことが、Uさんの供養にもなると、勝手ながら思っています。
そのためにも、このブログを読んでくださっているグリオーマ患者のみなさんが、病気を克服し、一年でも、一日でも長く、幸せな生活を送られることを、改めてお祈りします。
Uさん、さようなら。
天国から奥さんを見守っていてあげてください。

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「患者仲間の死」への11件のフィードバック

  1. 自分が病気になるまでは人間の死というものを実感できませんでした(私の場合には悪性リンパ腫が発症する前に、肋骨の肉腫が見つかった時があり、幸い良性腫瘍でしたが、その時にがんと初めて正面から向き合いました)。小説や映画でたくさん触れていても、それはあくまでも観念的な死でした。高校時代に級友が自殺した時も、大学時代の友人が交通事故で亡くなった時も、どこか自分とは別の世界のできごとと感じておりました。
    それががんという病気を宣告された途端に、急に自分の目の前に現れ、忘れようとしても忘れられない、気を紛らわそうとしても紛らわせきれない存在となります。肉腫の時は肺がん病棟に入れられたために、周囲は末期の肺がんの方ばかりで、仲良くなった人たちも私が退院した後の2年間で全てなくなりました。私は入院中に「良性である」ことが判明しましたが、同室の方たちは自分のことのよう喜んで下さったのが忘れられません。内心は「昨日まで同じ岸にいた自分が突然に川の反対側に来てしまった(労せずして来ることができた)」という心苦しさがあったのに、そんなものを吹き飛ばすようにおどけて「万歳」をして下さった彼らを見て、心ならずも号泣してしまいました。私ががんの患者さんに「戦友」という感覚を持ち始めたのはそれが最初です。
    良性腫瘍を経験したことですっかりがんを忘れていた時に「悪性リンパ腫のステージIV」の宣告でしたが、子供たちがもう大学生だったこともあり、肉腫の時(二人の子供はまだ小学生)に比べると、気分的にうんと楽でした。
    ただ今でも思うのは、肉腫の宣告の際には私は何の心の準備もなく、またネットも普及していなかったことから情報を満足に得ることもできず、孤独と不安の中で悶々とした状態の情けなさです。高山さんとは死に対する考え方の少し異なる私は「たまたまがんに見こまれたのなら仕方ない。どうせいつかは死ぬんだから」と常々考えており、生きる時間をどうやって延ばすことよりも、むしろ「残された時間をどのように生きるか」を考えております。
    他人事という誹りを承知で発言するならば、最後に高山さんと知り合うことで自分としては満足のいく(というか悔いの残らない)治療を受けることができて、Uさんはある意味の充実感を得られたのではないでしょうか?究極の目的である完治こそ手に入れることはできなかったとしても、悔いに満ちた最後を送るがん患者が多いことを目の当たりにしているだけに、私はそう考えます。
    「Uさんの分も生きる」という高山さんの意思は間違っていません。病気を克服することは簡単ではなくても、悔いの少ない人生を送ることは、ほんの少しの考え方の改革で誰でも可能だと信じます。そしてがんにかかったことは、鈍感な私がそれに気づくための道程だったんだなぁと思っております。

  2. こうちゃん361さん、いつもコメントをありがとうございます。
    Uさん夫妻のことを考え、またこのブログを読んでいる他の患者さんのことを考えた時、このブログ記事を書くべきかどうか、悩みました。でも、このことを書かないと、読者の方のため、あるいは将来の自分のための「グリオーマ体験記」としては、中途半端なものになってしまうと思いました。それだけ、自分にとっても影響の大きな出来事でした。
    Uさんの死は、僕自身にとってもなかなか受け入れ難い事実です。自分の中で消化するにはまだ時間がかかりそうです。
    このブログ記事を読んだUさんの奥様からは、僕がブログに自分の経験を書いてきたことに対して、改めてFacebook上で感謝のお言葉をいただきました。
    一年前にお二人に初めて会ったときのことを思い出し、本当に残念でなりません。

  3. 初めまして。突然のメールで失礼致します。私の母にグリオーマが見つかり、筑波大学か女子医科での手術を希望しているのですが、筑波大学もMRI手術があり、どちらか迷っているのですが。手術だけではなくて、後の放射線治療もまたその線量を決める事にも技術といううかそういったものの違いが病院によっ
    てあるのか心配なのですが教えていただけたらとおもい
    メール致しました。

  4. Sさん、お母様にグリオーマが見つかったとのこと、さぞご心配なことと思います。筑波大学と女子医大のどちらかで迷われているのであれば、私は女子医大をお勧めします。
    グリオーマ治療で最も重要なのは手術です。手術で正常組織をできるだけ傷つけずに腫瘍をできるだけ多く取り除くことが重要、つまり予後を大きく左右します。手術で腫瘍を取りきれれば(腫瘍摘出率95%以上となれば)、その後の放射線治療、抗がん剤治療は、ほぼ再発の予防的な治療というような位置付けになります。手術で腫瘍を取り切るための大きな武器になるのが術中MRIの設備ですね。
    筑波大学にも術中MRIはあるようですので、その点は女子医大と同じです。あとは手術の経験数とそこからくる技術の違い、それらに起因する治療成績の違いがあるかも知れません。私は筑波大学のグリオーマの治療成績(5年生存率)を知りませんので、確定的なことは申し上げられないのですが、恐らく女子医大より高いということはあまりないのではないかと推測します。ただ、術中MRIがあることから、平均的な治療成績よりは恐らく高いことと思います。
    どちらか迷われているということでしたら、私は女子医大をお勧めいたします。またご不明な点があればこちらにコメントいただければと思います。
    お母様が最善の治療を受けられることをお祈りしております。

  5. 患者仲間の方のご冥福をお祈り致します
    今週 東京女子医大に 行ってきました。 
    大きくはなっていないようですよ。変化があってから 考えましょう 今手術をするにはリスクがの方大きい 病院に来るまでの間はあまり 考えすぎないように 手術ばできます と またまた 心強い 言葉をいただくました。同じ内容を地元の医院でも 言われたのですが
    不安の残る言い方されるので心配していましたが
    この言葉を胸に変化のない事を願い 次回まで 前向きに考えようと再び思いました これも高山さんのこのブログに出会えたからです ありがとうございました

  6. サフランさん、
    お久しぶりです!コメントありがとうございます!
    近況をお聞かせいただき、安心しました。この病気では、変化がないのが一番ですよね。先生がおっしゃる通り、病院に行くとき以外は病気のことは気にせずに生活していくのがいいですね。先生は、今後変化がある可能性を見越して検査や診察のスケジュールを考えてくださっているはずですし、その検査でいざ変化があっても、手術ができて摘出できれば大丈夫なはずですから。
    だから病気の心配は病院の先生に任せて、我々は前を向いて生活していきましょう!

  7. いつも 暖かい 言葉を頂き毎回涙がでます 身近に不安を話せる人がいないので ホッとします ありがとうございます。

  8. サフランさん、そう言っていただけると僕もうれしいです。また何かあればいつでもコメントください!

  9. はじめまして。
    高山さんのブログを拝見させていただきました。
    私も、先日、脳ドッグの後、脳腫瘍と診断され、大学病院等に転院の上、手術を要すると言われました。
    いろいろと調べた結果、女子医科大学か国立がん研究センター中央病院を検討していたところだったので、実際に手術を受けられた方のブログは、たいへん、参考になります。
    今、薦められている大学病院は杏林大学か筑波大学なのですが、女子医科大学を希望する場合、どのような手続きを行ったらよいのでしょうか?
    突然、このように不躾な連絡を入れてしまい、申し訳ありませんが、ご連絡いただければ幸いです。
    よろしくお願いいたします。

  10. kさん、コメントありがとうございます。女子医大での治療の受け方について下記の通りご案内いたします。
    まず、今の病院(脳ドックを受けた施設)に「女子医大で診察を受け治療を受けたい」と申し出て、東京女子医科大学病院宛に「紹介状」を書いてもらい、検査画像を収めたCD-ROMと一緒に受け取ってください。(紹介状は先生個人名宛ではなく女子医大の脳神経外科宛で大丈夫です)
    その上で女子医大の予約センター(下記)に電話し、「脳神経外科の村垣先生もしくは丸山先生」を指名して、初診の予約を取ってください。(ともに私の主治医です)
    ■東京女子医科大学病院 予約センター
    予約専用直通電話03(3353)8138
    お取扱時間帯平 日 午前9時〜午後4時
    土曜日 午前9時〜正午(第3土曜日は休診)
    http://www.twmu.ac.jp/info-twmu/jyushin/yoyaku.html
    病気が見つかり、いろいろとご心配なことと思います。また何か私でお役に立てることがありましたらご連絡いただければと思います。

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