昨日、白血病・悪性リンパ腫の定期診察で虎の門病院に行ってきました。前回の診察から2週間ぶりです。
今回は、検査と診察の後に、お世話になった先生方に「治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ」の出版のお礼をしてきました。
(左が虎の門病院 血液内科部長の谷口修一先生。右が僕の担当医の湯浅光博先生)
いつものように採血が終わってから診察までの待ち時間はスタバに退避。そこで同じテーブルに座っていた、頭に包帯を巻いた日本語ペラペラのイラン人の方から話しかけられて、スタバのWifi接続のサポートをすることに(笑)。
その患者さんは良性の脳腫瘍のために虎の門病院で手術を受け、今まだ入院中の患者さんでした。外出できるようになり、スマホの調子が悪いのでauショップに出た帰りにスタバに寄ったとのこと。僕も脳腫瘍もやっていたため、お互いの身の上を話しつつ、本の宣伝もしておきました(笑)。
その方と話しているうちにあっという間に予定の時間が来たため、急いでGY先生の診察室前に。すぐに呼ばれました。
血液検査の結果で一番気になっていた白血球は、前回の1400から2100にまで回復していました。抗がん剤を中断したお陰です。これには安心しました。
前回の診察から、免疫力の低下のために37度前後の微熱がずっと続いていました。それがこの診察の前日にようやく平熱に戻ってきていました。やはり白血球数が増加して免疫力が回復していたようです。それが血液検査の結果にも表れていて安心しました。
2100でも依然基準値よりは大幅に低いのですが、増加傾向にあることは喜ばしいことです。
その他、血小板も増加し、また肝臓の数値は全て基準値内に収まっていました。赤血球やヘモグロビンは依然基準値より少なく、立ちくらみ等はあるのですが、これはやはり回復に時間がかかるのでしょう。またSeg(好中球)が30.1%と少ないのも気になりますが、これも今は仕方ないのでしょう。
以上のように、血液検査の結果は抗がん剤の中断により前回よりも明らかに回復傾向にはあるのですが、まだ十分とは言えないため、維持療法の再開は引き続き延期とすることにしました。
そして次回の診察は2週間後とし、そのときの血液検査の結果を見て、改めて維持療法をどうするか相談することにしました。
ただ、GY先生といろいろ話したのですが、恐らく、今回の中断を機会に、もう維持療法は再開せず、やめるという方向になりそうです。以下、GY先生の話の要約。
もし高山さんの体の中にまだ白血病のがん細胞が残っているのであれば、そのがんは今の抗がん剤ではやっつけきれないものということになるので、維持療法を続けても意味がありません。いずれにせよどこかの段階で本格的な治療に移行する必要があります。
もしがん細胞はすでに高山さんの体からなくなっているのであれば、やはり維持療法は意味がありません。
これを聞いて、「つまり、どちらにしても維持療法は意味が無いということですね」とお聞きしたら「まあそういうことですね」との回答。
僕の気持ちとしては、以前決めた「寛解から丸三年となる11月下旬までは維持療法を続ける」という方針に若干のこだわりはあるのですが、メリットがない治療を続ける意味はありません。
「まあまた二週間後に話しましょう」ということになりました。それからGY先生には出版のお礼をお伝えして、診察は終了。
それから受付に行って、谷口修一先生に連絡してもらいました。しばらくすると、セカンドオピニオン外来の患者さんとの面談が終わった谷口先生が来てくれました。入院中にお会いして以来です。会議室のような場所に行って、ひとしきりお話ししました。
先生はお送りした著書について「ごめん、会う前に全部読もうと思ったんだけど、3分の2くらいしか読めなかった!」と言いつつ、でも先生が登場する白血病の箇所は読んでくださっていたため、「確かに『治しにいきましょう』って言ったよね」と言ってくれました。
僕は初診のときの谷口先生のその言葉や、病室に来てくれたときの「高山さんは娘さんが成人するまであと17年生きる必要がある」と言ってくれた言葉にすごく勇気づけられたというような話をしました。
谷口先生はこう言いました。
自分は患者さんを治すのが仕事です。確かに生存率などの統計上は、一部治らない患者さんもいます。でも自分は、全ての患者さんを治しにいくんです。
このお言葉には改めて深く感銘を受けました。そういう気持ちで治療してくれていたんだと、感動しました。
僕は脳腫瘍のときも、白血病・悪性リンパ腫のときも、「統計的に生存率が何%であろうと、患者にとってはゼロか100か。自分は何としても生き残る%に入るよう、一つ一つ最善の選択をしていく」と考えていました。でもまさか先生もそういうつもりで治療に当ってくれているとは思いませんでした。「統計データに関係なく、全ての患者さんを治しにいく」という先生の言葉を聞いて、一貫して患者の立場に立った先生の姿勢の根源が分かった気がして、深く深く感銘を受けました。
僕が一番最初に谷口先生を頼るきっかけになったのは、奥さんが見つけてくれた「NHK プロフェッショナル仕事の流儀」の谷口先生のページでした。そこにはこう書かれていました。
谷口のもとに来る患者は、重篤な患者がほとんど。教科書や文献を探しても、答えは書かれていない。最善の治療法を、自ら見い出さなければならない。まさに考え抜く「根性」が必要なのだ。
これを読んだときと同じような感銘を、この日の言葉からも受けました。
また谷口先生は、「EBM(Evidence Based Medicine)とインフォームドコンセントの間違った認識の広がりが医師の患者との会話を阻害している」というような問題意識について話してくれました。
途中、入院中の僕の担当医のMY先生も呼んでくれ、3人で入院中の話や前述のような現代の医療の問題点などについて話しました。
そして谷口先生は「高山さん、著書にサインしてくれよ」と言ってくれ、先生の部屋に案内してくれました。そこで谷口先生とMY先生(というか湯淺先生)のお二人にお贈りした著書に僭越ながらサインさせていただきました。
そしてお二人と記念撮影。タイミングが合わずにGY先生と一緒に写せなかったのは残念でしたが・・・。
でも、お世話になった先生方に、命を救ってくれたお礼とともに、著書の出版へのご協力のお礼ができ、しかもサインさせていただき、記念撮影までできて、感慨深い日となりました。今回の出版が、命を救っていただいた恩返しに少しでもなればと思います。
別れ際に、谷口先生は僕にこう言いました。
高山さんはこれから、医療のためになる活動をしてください。
重いお言葉、しっかりと受け止めました。
谷口先生の部屋に行く途中、谷口先生はある場所に案内してくれました。そこにはこの言葉が掲示されていました。
書かれた医学は過去の医学である
目前に悩む患者の中に
明日の医学の教科書の中身がある
(虎の門病院第二代目院長 沖中重雄先生のお言葉)
谷口先生の患者に対する姿勢は、虎の門病院に一貫して伝わる教えだったことが分かり、改めて感銘が深まりました。
忘れられない一日となりました。
治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ
(幻冬舎/税込1,188円/全国の書店にて発売中)