脳腫瘍の手術や放射線治療を受けても記憶力や思考力に影響がなかったことを英検一級合格で実証した患者の例

先日、東京女子医科大学病院に行ってきました。

いつもの3ヶ月おきのMRI検査です。脳腫瘍治療のフォローアップですね。

がん治療におけるインフォームドコンセント

さて。脳腫瘍の治療では、というか病気の治療は全般に、リスクを伴います。

今はインフォームドコンセントが徹底していて、治療の前に医師から治療のベネフィットとリスクを説明されて、その上で「リスクも理解した上で治療を受けます」という意味で同意書にサインをします。

僕は2011年の脳腫瘍の治療では、手術放射線治療と抗がん剤治療というがんの三大治療をフルで経験しました。

怖くなった脳腫瘍の放射線治療のリスク

その中で、特に放射線治療の前には本当にたくさんのリスクを先生から説明されて、驚いたと同時に怖くなったことを記憶しています。

特に長期的な障害として、記憶力や思考力などの脳の機能低下や知能低下の可能性があると言われたときは、少し心配になりました。

もちろんそのときは、何が何でもがんを治すことが最優先であり、「何としても19年後の娘の二十歳の誕生日まで生き延びるんだ」と必死でしたので、放射線治療を受けないという選択肢はありません。

とはいえ、将来的に記憶を失ったり、ものを考えることに支障が出たりする可能性があると考えるとさすがに怖いものがありました。

そのときの詳しい様子は下記の闘病記に記録がありました。

特に放射線治療の副作用のリスクについてはかなり丁寧に説明していただきました。短期的には、放射線照射部位の脱毛(僕の場合は髪の毛の脱毛。通常は数ヶ月経てば生えてくるが、永久脱毛の場合も)や皮膚の炎症、眼や耳の炎症や障害、吐き気、骨髄抑制(貧血、白血球減少)など。長期的には知能低下や脳の部分的機能低下、脳の壊死など。

▼脳腫瘍の放射線治療と抗がん剤治療の実際(経緯19) – オーシャンブリッジ高山のブログ

その治療のリスクを前提にした、今回の検査と村垣先生の診察の話です。

村垣先生の診察にてMRI検査の結果

まずはMRI検査の結果です。

おかげさまで今回もMRI検査の結果は問題なしでした。

そして、最近の検査では注意して経過を見ていた出血の跡も、MRI画像上ではもう消失していました。

村垣先生に、以前の画像と並べて見せていただいて安心しました。


(左下が今回、右下が2022年11月、右上が2022年8月、左上が2022年2月)

英検一級合格が他の患者さんの希望に

一通り検査結果を確認して、世間話タイム。村垣先生に英検一級合格を報告したところ、

「それはおめでとうございます!他の脳腫瘍の患者さんの希望になります!治療後の脳の障害を心配される患者さんもいらっしゃるので。これからは高山さんの話を名前を伏せて紹介させていただきます!」

と言っていただいたので、「名前を出していただいても大丈夫ですよ!」とお答えしました。

僕自身、12年前の、リスクに怯えつつも治療に向かおうとしていたときのことを思い出すと、自分が治療から10年以上経ってから英検一級に合格したと知ったら、確かに安心するだろうなあ、と思いました。

脳腫瘍治療を乗り越え、50歳を超えてから、4000語近く(出る順パス単の2400語+でた単Stage1の1500語、重複あり)の単語を覚えて、リーディングとリスニングとライティングとスピーキングを鍛え直しての合格でしたしね。

幸いなことに、記憶力、思考力、判断力等には今のところ問題はないようです。

ただ一点、手術の影響で視覚障害(視野の左下4分の1が見えない)があるため、英語の長文を読む際、改行時に次の行の行頭を毎回見失ってしまい時間をロスします。そこは左手の人差し指で読んでいる行の行頭を指さしておく等の工夫でカバーしました。

抗がん剤の副作用の滑舌の悪さが改善

もう一つ、村垣先生に言われてうれしかったことがあります。

それは、滑舌が良くなったということ。

少し背景を説明します。

僕は病気をしてから、口がうまく回らないというか、発音に詰まることが、今でもよくあります。

これは悪性リンパ腫のときに使った抗がん剤(オンコビン/ビンクリスチン)の副作用です。2013年当時の闘病記に記録がありました。

前日から感じ始めた舌先の微妙な痺れが気になるようになってきました。こうした末梢神経の痺れは、3日前に注射した抗がん剤のオンコビンの副作用です。

▼抗がん剤治療に対する時間軸の感覚の変化/腫瘍による左足の痺れ:白血病・悪性リンパ腫闘病記(79) – オーシャンブリッジ高山のブログ

その後、舌先がしびれるだけでなく、発音に詰まるようになり、副作用の末梢神経障害が強くなってきたということで、最後の抗がん剤治療のコースではオンコビンは取りやめた記憶があります。

その末梢神経障害の副作用がいまだに少し残っているということです。

ほぼ10年も経っているのに副作用が残っているとは、抗がん剤、恐るべしです。

でも、村垣先生から「滑舌がよくなりましたね!」と言っていただいたということは、この末梢神経障害は改善してきているということです。

自分では今も発音に詰まるたびに「相変わらずだなあ」とあきらめモードだったので、村垣先生から滑舌がよくなったと言われて少しうれしくなりました。先生が言うなら間違いないでしょう!

そしてこの言葉の詰まりの改善には、英語の勉強の影響もあるかもしれません。

特に、ELSA Speakという発音矯正アプリを使った、唇や舌の動きを意識しながら英語の会話文を発音し、音素単位でAIに矯正してもらうというトレーニングが効いているように思います。

さらに、英検の勉強全般を通して、脳をたくさん使ったことで滑舌がよくなったという効果もあるかもしれません。

思いがけないところで、英検一級合格の効果を実感してしまいました。

心配し過ぎないこと

病気、特にがんの治療では、その副作用や後遺症(合併症)、また治療そのものの苦痛など、いろいろな困難に直面します。

でも全てについて心配しすぎる必要はありません。
全てのリスクが自分に起こるわけではありません。

そして、自分に起こった副作用も、思いがけずに回復するかもしれません。
僕の言葉の詰まりのように。

自分に起こった後遺症も、何とか工夫して乗り越えられるかもしれません。
僕の視覚障害のように。

そんなことを思った診察日でした。

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