重度の貧血の原因は?/現代医療は万能ではない

まだブログには書いていなかったのですが、今年1月の検査で重度の貧血が見つかっていました。

1月25日にいつもの定期的な血液検査で、ヘモグロビンが急に前回の9.7から6.6に減少していました。ヘモグロビンの値の基準値は13.7〜16.8ですので、重度の貧血になります。

もともとは過去の治療の影響で貧血状態は続いていて、この1月までの検査でも大体10前後で推移していました。これでも十分な貧血です。それがこのとき以降、ガクンと下がってしまいました。

追加の血液検査を受けたところ、直接的な原因は体内の鉄分の減少であり、病名としては鉄欠乏性貧血とのこと。問題は、なぜ鉄分が減少したのか。その根本原因を探る必要があります。

貧血の原因予想その1

僕の場合、これまでに悪性リンパ腫白血病と血液のがんを2回やり、特に白血病ではさい帯血移植を受けていますので、そうした造血機能の異常、つまり病気の再発や、別の血液疾患(再生不良性貧血など)を最初は心配したのですが、山本先生によると、血液検査の結果を見るとその線はないとのことでした。

貧血の原因予想その2

ヘモグロビンを作るほうは問題ないということで、次に疑われたのが、体のどこかからの継続的な出血です。つまりヘモグロビンを作ってもそれがどんどん体外に出ていってしまっていることから貧血になっている、という予想です。

特に僕はこれまでに、食道静脈瘤大腸がんといった消化器系の疾患で、出血リスクのある内視鏡治療や手術を受けています。

特に食道静脈瘤は破裂して出血しやすい病気です。破裂してしまえば大量の吐血をして命に関わるわけですが、そこまでいかなくても過去に処置した箇所からだらだらと出血が続いているかもしれないと疑ったわけです。

同様に大腸がんについても、腸を切断して縫合しているわけですので、その箇所から出血した可能性も考えられます。

ということで、まずは胃と食道の内視鏡検査を受けました。しかし、出血は確認されませんでした。

続いて受けた大腸内視鏡検査も同様で、出血箇所は見つかりませんでした。

また、4月に受けた肺がんの手術の前にも、PET検査をはじめさまざまな検査を受けていますが、そちらでも出血につながる所見は見られませんでした。

血液を作る機能に問題はなく、その血液が出血で体外に出ていってしまっているということもなし。

貧血の原因究明はお手上げになってしまいました。

原因不明のため対症療でしのぐ

こうした検査の途中で、とりあえずの対症療法として、鉄剤を服用することになりました。貧血の根本的な原因は分からないけれども、鉄分が不足しているならとりあえずそれを薬で補給しよう、ということです。その結果、今はヘモグロビンの値は8〜10あたりで推移しています。基準値には及ばないものの、1月の急減(ヘモグロビン値6.6)以前のレベルに戻っている感じです。重度の貧血から中等度の貧血になったというわけです。

一応は鉄剤の服用の効果は出ているということで、当面、これを続けるしかないということになっています。

とはいえ、依然として貧血状態は続いているわけで、自覚症状として立ちくらみは続いています。そのため椅子から立ち上がるときなどは、一旦立ち上がり、少し何かにつかまって落ち着いてから動くようにしています。

現代の医療も万能ではない

2011年に脳腫瘍で入院して手術を受け、放射線治療を受け、抗がん剤治療を受けました。その後も悪性リンパ腫白血病大腸がん、そして今年の肺がんを5回のがん治療を経験してきました。その過程で、現代の医療も万能ではない、と患者として感じることが何度もありました。

万能ではない、というと語弊があるかもしれませんが、治療の全てが厳密な研究に基づいて決まっているのではなく、意外と経験則がそのまま治療のガイドラインになっているのかな?と感じることが何度もありました。

例えば、脳腫瘍摘出後の放射線照射範囲は腫瘍摘出部の周囲1.5センチだとか(だいたいその範囲に微小ながん細胞が散らばっているはず)、抗がん剤治療のコース数は6コースか8コースかだとか(副作用によっては8コースまでやらなくても6コースでやめても効果はそれほどは変わらない?)だとかいうのは、どちらかと言うと経験則に近いのかなと当時の自分は理解しました(そうではなく、厳密な研究データに基づいて決まっているのでしたら申し訳ありません)。

それはつまり、人間の体のこと、そこで起こる病気のことが、全て科学的に完全に解明されているわけではないということなのだと思います(当たり前のことですが)。

さらに言うと、過去の基礎研究や臨床事例などの論文の蓄積をもとに、標準的な治療方法や検査結果の解釈の仕方などが教科書やガイドラインなどで共有されてはいますが、そこに全ての答えが見つけられるというわけではないということも、患者として何度も感じました。

今回の貧血の原因が検査では分かっていないこともその一つです。

結局は、患者ひとりひとりで表面に出てくる症状の原因や、それに対する治療への反応性などは異なり、その個々の患者の観察と理解から、医師は最適な治療を導き出していかねばならない、ということなのだろうと思います。

そしてそれは、一つ前の記事に書いた谷口修一先生がまさに言っていたことです。

2013年に悪性リンパ腫が見つかり、国立がん研究センターの医師から「これは悪性リンパ腫という病気で、5年生存率は40%、標準治療があるのでどこの病院で治療しても同じです」と冷たく宣告されて、治してくれる病院を必死の思いで探しているときのこと。

妻が見つけてくれた、当時虎の門病院の血液内科部長だった谷口修一先生がNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出た際のウェブページ。そこで谷口先生が「治療は教科書に書いてあるのではなく、患者の中にある」というようなことを言っていました

その後も多くの治療を経験する中で、僕という患者の中に最適な治療を見つけようとする医師の姿を見たことが何度もありました。

そんなことも、今秋出版される2冊目の著書に書いていますので、ぜひ発売されたらお手に取ってみていただけるとうれしいです。発売日やタイトルは、追々このブログでもご案内していく予定です。

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