2週間ほど前のことですが、舌がんの手術を受けて、舌を部分切除しました。
今はすっかり元気ですのでどうかご心配なく。
昨年10月に「5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割」を出版したばかりですが、これで6度目のがんとなりました。
舌がんが見つかったきっかけ:舌の裏にできた傷
昨年の夏頃から、尖った歯が舌の裏側に当たって傷ができていました。
特に食事のときに痛むため、早めにかかりつけの歯医者さんに診てもらったのですが、大きな病院で診てもらったほうがいいということに。紹介状を書いてもらって地元の病院の口腔外科に半年以上通院していました。
しかし、若い担当医の先生は「悪いものではないですから心配しなくていいですよ」と言って、舌に当たる歯を削ったり、舌に歯が当たらないようにマウスピースを作ったりはするものの、その傷に対する治療はありませんでした。
心配なのでときどき「上の先生の意見も聞きたいのですが」と伝えて偉い先生に診てもらうのですが、その先生も、「がんなどの悪いものではないですから大丈夫ですよ、心配いりません」と繰り返すのみ。痛いのは痛いままで、傷は治りませんでした。
別の病院で、即、生検
このままてまはまずいと思い、「別の病院の意見も聞きたいので紹介状を書いてもらえませんか?」と伝えて、別の歯科口腔外科専門病院へ行きました。
すると、そこの医師は最初の診察で即座に「組織を取って病理検査をしましょう」と提案してくれました。「この病変が何なのか、しっかり診断をつけてから治療を考えましょう」と至極全うな考え方です。
そして後日、痛い傷の周囲を少し切って、病理検査に出しました。
すると、残念ながら、その組織の中にがん細胞が見つかりました。
僕は、最初のがんである脳腫瘍が見つかったときから常に最初に相談している幼なじみのT君に相談しました。T君は某大学病院で放射線腫瘍医をしています。
「舌がんが見つかったので、どこかいい病院を知らない?」という相談です。
舌がんでは全国屈指の東京医科大学病院へ
T君は僕の相談にすぐに返事をくれました。
彼によると、舌がんであれば、最近は東京医科大学が治療実績を伸ばし、診療体制も拡充していて勢いがあるとのこと。
実際に調べてみると、舌がんの治療実績では東京医科大学は全国3位です。
「ぜひこの病院で手術をしてもらいたい」と思い、外来で岡本伊作教授(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)の診察を受けるために東京医科大学病院の写真受付に行ったのが2月17日でした。
東京医科大学病院へは、前の病院で用意してもらった紹介状と、検査画像(MRI、CT)の入ったCD-ROMを持参しました。
初めて見る東京医科大学病院は建物が新しくてきれいで、まるでホテルのようでした。しかも西新宿の駅から直結です。各種窓口のスタッフの方の対応も患者目線で丁寧で、こちらもホテルスタッフのような印象を持ちました。
診察室で初めてお会いした岡本先生は、非常に人当たりがよく丁寧な先生で、かつ手術の説明や、検査予約などの手続きは、テキパキと手際が良く、一見して信頼できると感じさせてくれる先生でした。さらに、ここが非常に印象的だったのですが、看護師さんとの相互の信頼関係も確立されている様子でした。この感想は、その後の入院、手術、退院に至るまで、変わることはありませんでした。
この診察の後、手術に必要なPET検査やエコー検査、麻酔科の診察などを経て、3月1日の土曜日に東京医科大学病院に入院しました。
そして週明けの3月3日月曜日に手術を受けました。
手術で舌を部分切除
手術当日は8:15に手術室に入り、手術が終わって病室に戻ったのが2時間後の10:15、麻酔が切れて目が覚めたのが12:40ころとのことでした(妻の記録による)。
手術直後の岡本先生から妻への説明によると、切除したのは舌の裏の右側の縦横2×3センチほど、厚さ数ミリほどでした。がん細胞の存在が疑われる場所は、取り残しなく取れたとのこと。
そして切除した部分をふさぐように左右の皮膚(粘膜を寄せて縫合しました。この縫合も肝で、切除した範囲に沿って直線で縫合してしまうと、舌がねじれて舌先が左右にぶれてしまうとのこと。そうならないように、あえて曲線で縫合することで、舌がまっすぐになるとのことでした。その説明の際にいただいたのが冒頭の写真の資料です。
なお、術前のPET検査では首のリンパ節には転移はみられなかったため、リンパ節郭清はしませんでした。
ステージ1で初期だったことから、追加の抗がん剤治療や放射線治療もしませんでした。
手術当日や翌日、翌々日は、傷が痛くてしゃべるのも大変でした。痛いだけでなく、創部が腫れているせいか、口の中に大きなかたまりが入っているような感じでした。
食事は鼻から喉を通じて胃に通した管で流動食をとっていました。
この入りっぱなしの管が、胃カメラのときの喉を通る内視鏡と同じように、違和感があり、ちょっと困りました。細い胃カメラが入りっぱなしになっているような状態です。胃カメラの検査の時は喉が苦しいため、いつも鎮静剤を使ってもらっている自分としては、なかなか苦しい状況でした。
しかし、手術の2日後の3月5日の診察で思いがけず抜いてもらえました。
術後の舌のしびれと味覚障害
その翌日の3月6日には、先生から「病院食でなくても、下のコンビニ(ナチュラルローソン)で食べたいもの買ってきて食べればいいですよ」と言ってもらえたので、早速クリームパンとカフェオレを買ってきて食べてみました。
痛くて食べにくいながら、カフェオレでパンを柔らかくして喉に流し込むようにして食べました。舌の裏を切っているため、食べ物を咀嚼しているときに、舌の下側にものが入って傷口に当たると痛むのです。
だからあまり噛まずにパンを口内で飲み物で柔らかくして喉に流し込むような食べ方が楽でした。
またこのときに気づいたのですが、味覚障害になっていました。2017年の白血病の臍帯血移植後以来です。でも完全に味が分からないわけでもなく、クリームパンのクリームやカフェオレの甘みがいつもより少し薄く感じるのです。
その後気づいたのですが、舌の表側(上側)の右側の感覚がほぼないのです。常にしびれているような感じで、指で触っても感覚がありません。おそらく、舌の右側で味が感じられないことから、いつもより味を薄く感じるのかな、と思いました。
今回、前述の通り舌の裏の右側を一部切除して、傷口を寄せて縫合しているのですが、それが神経に影響しているようです。でも岡本先生によると、数ヶ月単位で時間はかかるけれども良くなっていくでしょうとのことでした。
文字通り「舌足らず」なしゃべり方に
さて、手術直後は手術で切って縫った傷が痛く、舌がうまく動かせないため、前のようにはしゃべれませんでした。特にさ行やざ行、ら行、だ行が発音しにくかったです。文字通り、舌足らずになったようなしゃべり方でした。
でも毎日、先生や看護師さん、栄養士さん、薬剤師さん等としゃべっているうちに、どんどん慣れてきました。毎晩妻と娘とFaceTime(テレビ電話)で話していましたが、2人とも、日に日に聞き取りやすくなっていると言ってくれました。
手術当日と翌日くらいは、家族との通話でもほとんどしゃべれず「うん」とか「いや」とかくらいだったのですが、日中の先生や看護師さんたちとの会話による「実践トレーニング」のお陰で、3日後には「だいぶ聞き取りやすくなってるよ」(妻)とか「一日一日の進歩がえぐい笑」(娘)と言ってもらえました。
術後7日目のスピード退院
そして3月7日、8日くらいで、食事(病院食ではなく主にローソンのパン)が口からしっかり食べられるようになったことを看護師さん経由で先生にアピール(笑)した結果、3月8日土曜日には点滴の針も抜けて、週明けの3月10日月曜日には退院することができました。
術後8日目には200名以上を前にスピーチ
ちなみにどれくらいしゃべりが回復したかというと、退院翌日の3月11日には、以前よりお招きいただいていたある企業の式典で、200人以上を前にスピーチできたくらいです。術後当初はとてもしゃべることができず、直前まで、妻に代わりにスピーチしてもらおうかと迷っていたのですが、毎日如実に回復していたこともあり、思い切って自分で話してみました。もちろん参列者のみなさんにとっては聞きにくかった部分もあったかと思うのですが、後から感想をうかがうと、みなさんに伝えたかったことはしっかり伝わっていたようで安心しました。
またこのスピーチでしっかり責任を果たせたことで、自分にとっても、人としゃべることに対して自信がつきました。
お世話になったみなさんに感謝
その後も回復しており、最近では行きつけのカフェカルディのマスターにも、「高山さんが話すのを聞いていても、もうほとんど手術前と違いが分からないくらいだね」と言ってもらっています。
それもこれも、東京医科大学病院の岡本先生はじめ医療スタッフのみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。
そしてTくん、いつも病気で困ったときには助けてくれてありがとう!持つべきものは長年の友人だと改めて実感しています。さすが50年来の友!
早期発見のために定期健康診断は当然、かつ自覚症状にも注意
今回の舌がんは、定期的な検査ではなく、自覚症状に気づいてから早めに病院を受診したことで、早期に見つけることができました。そしてステージ1だったために手術のみで治療を終えることができ、入院期間も9日間と非常に短期で終えることができました。
がんの治療では、とにかく早期発見が最も大切です。それが治療を最小限に抑え、体への影響も最小限に抑え、早期に元の生活を取り戻すことに直結します。
そして、早期発見のために大切なことが2つあります。
1つ目は定期的な検査を欠かさないこと。そしてその定期検査(人間ドック等)で要精密検査となったら、できるだけ早く精密検査を受けることが大切です。
2つ目は、自覚症状に敏感になり、気になる症状があったらできるだけ早く病院を受診すること。
今回の舌がんは、この2つ目に該当するケースでした。
改めてこの2点を、このブログの読者のみなさんにも強調しつつ、今回の舌がん闘病記を締めくくりたいと思います。
読んでいただきありがとうございました!